リチウムイオン電池セルと聞いて、皆さんはどんなものかイメージが湧きますか?「セル」とは、英語表記で「cell」であり、1つの細胞を表します。つまり、リチウムイオン電池セルはリチウム電池を構成する重要な部分の一つです。ここまで説明すれば粗方想像はつくと思いますが、これからリチウムイオン電池セルについて、詳しく説明したいと思います。
リチウムイオン電池セルとは
リチウムイオン電池セルは、リチウムイオンバッテリーセルという別名もあり、リチウムイオンバッテリーの構成する細部の1つです。冒頭で説明したように、セルは細胞を示すので、リチウムイオンバッテリーにとっての細胞を意味します。
では、リチウムイオンバッテリーセルにとって細胞とは、一体何を表すのでしょうか。ここでいう「セル」とは、電池そのもの、つまり単電池を指すのです。必要な分だけの電圧や容量、出力を得るためにいくつかのセル(電池)を繋げた形となっているものが、リチウムイオンバッテリーとなります。
リチウムイオン電池のセル構成は – 仕組みは何?
リチウムイオンバッテリーの構造から説明すると、まずプラス極にはコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどの酸化リチウムが用いられ、マイナス極の方には黒鉛が使われています。
両極の間を移動させるための有機溶媒が経路に含まれており、さらにその両極を断絶させるための有機フィルムが入れられているのが大まかな構造です。その構造が金属の缶によって封入されているものがリチウムイオン電池セルとなります。
リチウムイオン電池のセル形状は?
先述の通り、リチウムイオン電池セルの最小構成単位は「セル」と頻繁に言われており、さらに以下のような種類が存在します。
円筒型セル
円筒型セルは名前の通り丸い形をした電池を作る構造です。普段私たちの生活でよく使う小型の電化製品などによく利用される乾電池も円筒型に含まれます。
リチウムイオン円筒型セルは、それ以外の乾電池よりもひと回りほどサイズが大きく、よくパックされてソーラーライトや船舶用バッテリーなどに活用されています。
角形セル
四角い形をしている角形セルです。角形セルは、内部に平状の捲回体が封入された電池を指します。
四角い形状の特長として、体積当たりのエネルギー密度が高く、比較的コンパクトかつ強度も備わっているところが特徴的です。電気自動車に使われることが多く、太陽光発電にも使われています。
ラミネートセル
ラミネートセルは、外装がラミネートフィルムによって覆われており、パウチパックのような外見から、パウチ型セルとも言われています。
ラミネートフィルムの特性上、形状自由度が高いといった強みが備わっているため、軽量化や薄型化、さらに省スペース化が可能で耐熱性も備わっているところが特徴的です。特にラミネート型セルが活用するジャンルとしては、モバイルバッテリーや、スマートフォンなどの電子機器が多いでしょう。
リチウムイオン電池のセル電圧は?
リチウムイオン電池セルの具体的な性質を、表を用いて表していきます。各値は、以下の表のとおりです。
三元系(NMC) | リン酸鉄リチウム | |
電圧 | 3.6~3.7V | 3.2V |
容量 | 1000~2600mAh | 6000mAh |
エネルギー密度 | 325Wh/L | 220~250Wh/L |
リチウムバッテリーのセル数は?
リチウムイオン電池を使う際、セル数というものを見かけたことはありますか?製品に付属している説明書または本体に貼付されているステッカーに、2セルや3セルといった表記を一度は見た覚えがあると思います。この数値は一体何を示しているのでしょうか。
実は2セル、3セルといった表記は、該当する製品に使用されている組電池をが造形された電池の数を指しています。例えば、2セルと記載されている製品の場合は、単純に2つの単電池(セル)が使用されていることになるのです。また、セルの電圧と容量を確定すれば、電池パックの電圧と容量によって、セルの数を計算できます。
リチウムイオン電池セルはどのように組み立てられる – 何か変化がある?
セルの組み立て手順を示します。ザッと言葉で手順を上げていくと、以下の通りになります。
「TAB溶接→成型→3方シール→真空乾燥→注液・トップシール→ガス抜き・ファイナルシール→充電・エージング→ホストコンピューター」
TABは電池タブ、成型は、溶接した電池タブの形状を整える作業です。3方シールとは、袋で例えると両サイドと底部分をシールした(封をした)袋のことを指します。
組み立て型セルは、充電・放電などの評価を行った後、各構成部材を容易に取り出すことができ、使用前後の変化を分析するにあたって利便性が高いです。
パワーセルとエネルギー貯蔵セルの違い
セルには大まかに分けて、パワーセルとエネルギー貯蔵セルの2種類があります。
パワーセルは、工具などに電力を供給する電源のような役割を担うパワーバッテリーの構成単位であり、電気自動車や電動自転車バッテリーなどとして、電力を供給するための単電池となります。リチウム電池の中で、三元系リチウムイオン電池は動力電池として使用できます。
エネルギー貯蔵バッテリーは、電池に電気を蓄えるために使われ、船舶用バッテリーや予備電源などに活用されます。リン酸鉄リチウム電池の用途はエネルギー貯蔵なので、エネルギー貯蔵電池であると言えそうです。
最も一般的なリチウムイオン電池セルは – その特徴は何?
ここまでリチウムイオン電池セルについて述べていきました。普段よく使われる一般的なセルは、一体何なのでしょうか?
最も一般的な電池セルは、18650セルです。18650セルは、円筒型の電池に該当され、特定のサイズが指定されています。18650の18は電池の直径の大きさを指し、650は電池の長さを表します。つまり直径が18mm、長さが65.0mmの電池ということを意味するのです。
18650電池の大きさとしては、単3乾電池(マンガン電池やアルカリ電池)をややひと回り大きくした形状と言えます。代表的な18650電池使い道としては、ソーラーライトや懐中電灯電池といった小型の電子機器に用いられていることで有名です。
まとめ
リチウムイオン電池セルにも様々な形状、特徴を持ったものが存在することが分かったと思いますが、その用途も様々です。円筒型、角形、ラミネート型など複数の形状の電池セルが存在し、私たちが普段見かける電池セルは18650です。
しかし、普段よく見られる電池セルは自分の設備に必ずしも適切ではありません。だから、設備に応じて最適なセルを選択する必要があります。用途に合った電池がすぐに分かるように、どの電子機器にどの電池セルが必要なのか、今一度考えてみしましょう。